チャプター 30

そう言い終えると、ビリーはヘンリーを振り返りもせずに、その場を離れた。

メイプル・グローヴの主寝室――雨筋のついた窓越しに、土砂降りの中に立ち尽くすヘンリーの姿がちらりと見えた。こんな距離があっても、灰色の瞳の重みがこちらにのしかかってくるようだった。私は目をそらし、手元の作業へ意識を戻す――人生の残りを、スーツケースひとつに詰め込む作業へ。

――本当に誰かを愛したなら。セーターを一枚、機械みたいにきっちり畳みながら、私は思う。――別れたあとに友達のままでいるなんて、できるはずがない。もし友情が成り立つのなら、それは最初から本物の愛じゃなかったというだけだ。

「ママ?」

ビリーの小さな...

ログインして続きを読む